私の神さまがいなくなってしまう話

わたしは、しがないオタクをしています。

好きなものを見て、聞いて、楽しんで、幸せになれるオタクです。どこにでもいるような、なんの変哲もないオタクなのですが、ここ3年間くらいずっと、とあるひとつのコンテンツを崇拝してきました。

 


たぶん、2.5次元とか、若手俳優とか、そういう沼にいる人は聞いたことあるかと思うんですけど。


「MESSIAH(メサイア)」という作品です。

2013年からプロジェクトがスタートし、舞台10本、映画4本、ドラマ1本を展開してくれました。

私は、アニメやドラマでいうセカンドシーズンみたいなものにあたる「刻シリーズ」からの参入なので、比較的新参者かと思います。

それでも、現場には全て通ってきました。

 

 

 

このメサイアが、たぶんですけど、2019年9月23日を持って終わりを迎えるんじゃないかと思っています。

 

 

 

私がメサイアと出会ったのは、2016年でした。

刻シリーズが始動する、という告知ツイートが回ってきたのがキッカケだったと思います。


その頃の私はまだ2.5次元という界隈に足を踏み入れたばかりで、脚本演出の人も「あ!この人の名前なんか見たことある!」とか、キャストも「●●の舞台で××の役やってた人だ!」みたいな基準で観劇する作品を選んでいました。

最初、メサイア刻シリーズの初回作品である、舞台「メサイア暁乃刻」も、安里さんと山田さんが出ているから見に行ってみるかー、みたいな感じでした。

(ちょっと前に、原作が大好きな黒子のバスケの舞台を見に行っていたので、完全にその影響です)


私に2.5次元を教えてくれた友達が、以前のメサイアの舞台に熱心に通っていて、メサイアという作品の名前だけは知っていました。その友達に「次のやつ見に行こうかなって思ってるんだけど、あれってシリーズものやんね?」と尋ねてみたところ、「そうだよ。過去作知ってたほうが楽しめると思うから、DVD貸すよ。見て」と言ってくれました。

加えて、GYAOだったかな、過去作のドラマと映画が無料で見られる期間だったので、それも見てみようと思いました。

なので私は、初めて現場に入ったのは暁乃刻という舞台ですが、初めてメサイアというコンテンツに触れたのは影青ノ章というドラマになります。


影青ノ章は、30分の短編ドラマが全6話の構成になっていました。

最初は設定もなにも知らず、メサイアの鉄の掟(作中で何度も出てくるので嫌でも覚えます笑)を見ても「ふーん」くらいの感覚だったと思います。まとめて30分を6本見る時間がなかったので、おうちで晩ご飯を食べるときに一本ずつ見よう、と思って、のんびり見始めました。

 

でも、見始めて3日目あたりで、続きが気になりすぎて1日1本のペースを守ることができず、全て一気に見てしまったことを覚えています。

影青ノ章のキャストさんは、当時の私が別段ものすごく知っている方はいなかったので(名前は知っている、有名な人だ!くらいの認識でした。今思うと、その頃本当に若手俳優のことなにも知らなかったんだなあ、と思います)、ただ単純にお話が面白く、登場人物たちの感情の揺れ方に共感して、この人たちが今後どうなっていくのか知りたい!という気持ちで見ていました。

メサイアについてなにも知らなかったため、他の作品が見たくて見たくて堪らなくて、順番をめちゃくちゃにすっ飛ばして、次に深紅ノ章を見ました。

登場人物が少し変わっていて、理解するまでに時間がかかりましたが、これもすごく好きだなあ、と思いました。


そうこうしているうちに、友達からメサイアのDVD全巻セット(銅〜鋼まで当時発売されていた円盤すべて)が届いて、それを二週間足らずで全部見ました。

順番をすっ飛ばしてしまった影青ノ章、深紅ノ章を踏まえてきちんと整理してみたら全てのお話が繋がって、最初敵対していたふたりがちゃんと時間をかけて相棒になっていく姿や緻密なミッションの構成、有り得ないはずなのに有り得てしまうであろうそのリアリティが、どれも本当に魅力的に感じました。どの作品を見るのもワクワクして、そのワクワクを全ての作品が上回ってくれて、一気にメサイアの世界に飲み込まれました。


そして迎えた暁ですが、DVDとは比べものにならないほど泣きましたし、正直に言うと記憶がほぼありません。

でもそのとき、涙は感情より先に出るものなんだな、と思いました。

終わった直後のツイートに「これはコンテンツ自体を好きになってしまうんじゃないかなあ」なんて呟いてましたが、本当にその通りになりました笑


舞台を見終わったあとの余韻も、大きかったと思います。セリフひとつひとつ、そのときの表情、仕草、対峙する相手の姿、全部思い返して思考を巡らせました。

元々考察が大好きなオタクなので、たった一回だけの観劇でも得た場面場面の考えを深めて考察すれば、点と点が繋がっていくらでも新しい発見がありました。


暁にたった一回しか行かなかったことを死ぬほど後悔して、そのあとの悠久からは大阪公演の全ての公演に入るようになりました。

日替わりが楽しいのはもちろんでしたが、毎回どんどん変わるお芝居を見られるのが堪らなく幸せでした。感情を剥き出しにして、板の上で、本当に死ぬんじゃないかとすら思うほどのお芝居をしてくれるキャストの方々が大好きになりました。

 


メサイアは、稽古開始から3日間くらいは、テーブル稽古というものをします。

キャストスタッフ全員で顔を突き合わせ、ホワイトボードを真正面に置きながら、セリフひとつひとつ、場面ひとつひとつの意味と解釈を掘り下げる稽古です。

違和感と歪みを全員でひとつずつ直し、全員で共有することによって、圧倒的な深みになります。

メサイアは、人を殺すスパイを題材にした作品ですが、人を殺したこともない一般人の私たちが恐ろしく感情移入してしまうのは、テーブル稽古のおかげなんじゃないかなあ、と思っています。


他にも、メサイアを見るようになって、板の上に立つ役者以外のところも気にするようになりました。


メサイアの、圧倒的に手数の多い殺陣をわかりやすくしてくれる音響さん。

すごく今更なことを言うんですけど、殺陣って音がないと本当になんにもわからないんだなってことを、メサイアを見て知りました。

メサイアの殺陣は、一気にふたりを相手にする役者が舞台上に3人いたりすることがあります。計6人が、同時に動き、全員違う動きをしている。その場面でも、ひとりひとりの動きを追うことができるのは、音響さんのおかげです。誰に注目しても、その人がなにをしているのかがわかる。「あ、避けられちゃった」「蹴り、止められた」「そこから撃つんだ!?」そういうことが、6人同時に動いていてもちゃんとひとりひとりわかるんです。

一度別の舞台を見に行った際、音響がズレていたことがありましたが、びっくりするくらいなにもわかりませんでした。視覚の情報と聴覚の情報が一致しなくて、頭が混乱するのかな?誰がなにをしているのかわからず、舞台上の光景が目の前を素通りしているような心地でした。


あと、殺陣もそうなんですけど、「作業」としての殺陣ってすごくわかりやすいなあ、と思います。

勢いがなくて気持ちが入ってなくて、淡々とした「作業」みたいにこなされる殺陣は、すごく気持ちが冷めます。


あと、衣装さん。メサイアの衣装は布が多めなのですが、殊更くるりと回る動きが多い方の衣装は綺麗なラインが描けるようになっていて、ふわりと広がるのがものすごく美しかったです。

山田さんなんかはバスケをされていて、その動きが殺陣にも取り入れられているんですけど、くるりと回って敵を斬る姿はかっこよく、衣装も相まってとても美しかった。

他にも、セミオーダーなので、キャストひとりひとりの体型に合わせて微調整される衣装が本当にありがたいなあ、と思いました。

悠久では、キャストの衣装をほぼフルオーダーで作ってくださったり、衣装さんのお給与に反映されているのかどうか私は存じていませんが、キャストひとりの要望を聞いてフルオーダーで衣装を作ってくださったこと、本当に心から感謝しています。


メサイアに出会うまで、やはり舞台で目立つのはキャストさんで、あと演出と脚本、なんて思っていた自分を恥じたいです。

舞台はチームプレーで、音響も照明も衣装もヘアメイクも、クレジットに名前のないたくさんの方が総力を尽くして仕上げてくださって、だからあんな奇跡みたいな空間が出来上がるんだなあ、と教えてくれました。当たり前のことなのに、なにも知らなかった。


舞台の新作を見る前は、「この舞台は本当にすごいから、こんなふうになるんじゃないかな!?余すことなく見なきゃ!」と思って劇場に向かいますが、いつもそれ以上のものを返していただいて、ボロボロになって劇場から出てきていました。

自分がどれだけ覚悟を決めて観劇に行っても、赤子の手をひねるように、それを圧倒的に凌駕したものを見せつけてくれます。

何度見たって芝居が変わり、演出家だけでなくキャストの意見も反映されて、脚本演出が変わります。同じ演目の舞台だけれど、得るものは毎回全部違っていて、ひとつとして同じ舞台なんかないのだということを、まざまざと突きつけてくれました。


私は、メサイアのことをひとつのコンテンツとして心から信頼しています。

私に舞台というものの奥深さを教えてくれました。

映画もドラマもありますが、やはり舞台が一番だと思っています。メサイアは、舞台でこそ表現されるべきコンテンツだと思います。

ここまで信頼できるものに出会えるって、ものすごく幸せです。

メサイアとしては「刻シリーズ完結」とおっしゃってくださってますが、次シリーズの情報がなにもない以上、これはメサイアという作品自体の終わりなのだなあ、と感じています。

 

私にとっての、奇跡が具現化した神さまみたいな作品でした。

演出脚本、キャスト、裏方のスタッフさん、お客さまのことも大好きです。全部大好きです。

感謝を伝える術を持たないので、この気持ちはアンケートとお手紙に書き留めておきたいと思います。


今は、東京へ向かうバスの中でこの文章を書いています。

あと3公演、私にとっても、メサイアにとっても残り3公演となる黎明乃刻を、思いっきり楽しんで、惜しんできたいと思います。


ただの自己満の文章なのでオチとかないですし、感情的でお見苦しい部分もありますが、読んでくださってありがとうございました。